慈眼寺 副住職ブログ

いきなり!大僧正

「能力」って面白いと思うんですよ。

「あの人は有能だ」とか、「仕事ができる」とか、「賢い」とか、「勉強ができる」とか、「強い」とか、「いいひと」でもそうですよね。

言葉にすると簡単なんですが、実は一様ではないですよね。

たとえば勉強ができる、といってもどの科目ができるのかって問題ありますし、一つの科目でも、その科目をどの要素で得点しているかっていうのは、実は人それぞれ、本当に様々な能力の複合で成り立っていると思うんです。

たとえば「倫理」という科目は、哲学や倫理学の問題を、西洋東洋含めて色々考えたりする科目なんですが、その点数の取り方は本当にさまざま。

極端な話、全部暗記してしまえばええやんという力業でも、8割くらいはとれちゃう部分もあるんです。暗記力ですよね。

ただ、元からこういうのを考えるのが好きな子ってのもいます。そういう子は、本当に授業中から目を輝かせて聞いてるし、突っ込んだ質問や面白い観点を披露してくれるんです。ただ、この手のタイプは純粋な暗記にあまり意味を見いださないし、暗記しなくても考えて解けるので、そのぶん手を抜く部分もあり、案外点数は伸び悩むタイプも多いです。

さらに、暗記もするけど、そこまで必死にしないし、哲学的思考とか全然興味なし、でも点を取る子もいます。これは暗記は最小限にして、合理的に選択肢を絞っていくタイプ。簡単に言えば要領のいい人。無駄な努力はしないかわりに、必要なとこは最低限する。これは受験に強い。

暗記型、思考型、要領型ってタイプに分けましたが、それぞれが暗記だけしてるわけでも、思考だけしてるわけでも、要領だけに頼っているわけでもない。いろんな能力を駆使して、逆に言えば色んなダメな部分を補って、結果を出す。その結果の試験で「70点」と平板にでますけど、その過程には本当に複雑な要素が絡んでるわけなんですよね。

バドミントンでスマッシュがはやい!といっても、腕の筋力が強い子、手首のスナップが強い子、体重移動がうまい子、空間把握が上手な子など、これまた色々な要素があるわけです。

で、何が言いたいかと言いますと、人間って、ほんま色んな凸凹で成り立ってるんだなあと。

僕なんかは手作業とか、ホンマダメなんです。なんというか、折り紙をキッチリ折るとか、アカンのです。テストを作成してても、ミスのないようにしっかり確認するのが苦手。苦手、で済ませたらアカンのですけど、苦手。出来上がった原稿を織り込んで冊子にする作業も遅い!「効率的な作業手順を考える」コレ、特にダメ!ひらたく言うと、「雑でどんくさい」!

概念的に合理的に分類するのは苦手じゃないんです。でもそれって、頭の中だけの話ですよね。こう配置した方が、作業しやすい、とか、ここをこう折れば、箱にキッチリ収まる、とか、そういうのがダメ!絶望的にダメ!こういうの、たぶん診断されたら、「普通」から大いに逸脱した数値がでると思います。

あと、僕味覚がそこそこ鋭くて、「これにアレを足せばこの味になるな」という足し算引き算がすごい上手。料理屋さんでも「あ、これは隠し味アレだな」とか結構当たる。奥さんには「料理人になればいいやん!」って、よく言われるんですけど、毎回否定してます。

「アホ!料理人なんか、最初はずっと皿洗いとかつら剥きや!俺はそんな下積み時代に、必ず店を飛び出す根気のないやつや!皿も割りまくる!俺が料理人になれるとしたら、”いきなり料理長”!これのみ!しかしそんなことはありえない!

そのへんはほんまよくわかってるんですよね。

だから教師ってのは授業中はかなり個人業者で一人芝居か漫談みたいなもんなんで、私のような人間にはけっこう有難い職業なんですよね。まぁ、ある意味ではいきなりシェフみたいなところありますし。職員室ではもちろんかつら剥き的な仕事してますけどね。

お坊さんもかなりその点、下積みや手作業もありつつ、要所要所でありがたいことに上げ膳据え膳していただける役割でもあるんで、比較的弱点が見えにくいんですが、本当のことを言えば「いきなり大僧正」とかのほうが向いてますよね。怒られるな(笑)

大学時代にキャプテンしたときに、なんで俺にしたん?って部員に聞いたら、

「お前がキャプテン以外をしている状況のほうがめんどくさい」

とのこと。

つまり、「人の上に立つ人物」というのにも色々いて、「何でもできて上に立つ人物」と「上に立つくらいしか役に立たない」=「能力が足りなさ過ぎて上に立つ」という「引き算キャプテン」とでも言うべき人物もいるんだなと、自分のことながら勉強になりました。

だからなんていいますか、向いてることだけやって生きていくこともできませんし、できないことを隠して生きていく必要もないし、そもそも、向いてないと思ってたことが実はかなり向いてるってこともあったりするし、努力でカバーできることもあるし、カバーできないこともあるし、あとひとくちに「結果」っていうけど、どの範囲でみるかによって、変わってくるじゃないですか。ドラフト1位が必ず活躍するわけじゃないし、長く平凡な成績を出す人も、一年だけ爆発する人もいるし。

まぁ、なんか長々と書いてますが、人間が頑張っている姿を見るのは、興味深いってことなんですよ。え?それだけ?(笑)