慈眼寺 副住職ブログ

甲賀の里に大観音菩薩

先日、たまたま学校の仕事がない日に、お参りがかなり早く終わる日があり、そこそこ早い時間から自転車に乗れました。

どこに行こうかなと色々思案しましたが、今年はどこも台風地震大雨の影響で土砂崩れがすごい。京都の山奥はきつそうなので、以前から是非行きたかった遠くのお寺に行ってきました。

その日たまたま午前中だけ暇だった、某大手ゼネコンに就職が決まっているラガメンSくんと和束のローソンで合流。そこから一路信楽を目指します。信楽で食事をしてSくんはデートのため帰還。デートまでの時間をおっさんと過ごしてくれるなんて素敵💛。

その後は県道50号をひたすら進みます。めちゃくちゃ淋しい道なのに、すごく快適。

途中から道を何度も間違えたりしながら、何度も滋賀県→三重県→滋賀県と県境付近を移動して、ついに到着!

滋賀県甲賀市の櫟野寺さんです。

60kmくらいでしょうかね。ほとんど平地なのですごく楽につきました。以前から一度お訪ねしたいと思っていたのですが、観音様の拝観可能な時期にうまく予定がとれなかったり、本堂の改築工事をなさっていたり、ついこないだまで東京の博物館にお出かけしていたりで、なかなか会えずッ!今年はちょうど33年に一度の特別拝観の時期だということを知り、この機会に行かねばッ!と思い至りました。

「33年に一度」と言いましたが、実は近年はお正月や、春や秋には拝観可能ではあるのですが、かつては本当に33年に一度だったようで、せっかくなので、「当たり年」に見てみたい!

次の33年後は76歳!

生きてても自転車で行くのは絶対無理!

お寺につくまでは寂しい山道。しかしお寺付近につくと、急ににぎやかに。想像以上にメジャーなようです。甲賀市の観光協会らしきブースや、ご当地グルメのテントまであり、平日なのにそこそこの人がいます。

さてこの櫟野寺。「らくやじ」と読みまして、「櫟」は天理の櫟本と同様に「いちい」の木の意。

この櫟という木がなかなか曲者で、クヌギなのか、樫なのか、実は色んな木の意味があり、ややこしい。

かつてあの最澄さんが本堂用の木材を求めてこのあたりに来た時に出会った櫟の巨木に観音様のお姿を刻んだ、とも言われる巨大な十一面観音さまであります。堂内の説明でも「櫟の木」と説明されていましたが、「櫟」は当然クヌギではなく、イチイガシでもなく、ヒノキのようです。詳しい画像は下をどうぞ。

https://www.sankei.com/photo/story/news/160413/sty1604130011-n1.html

もちろん全身を一本の木、は無理でして、頭と胴体部分、それでもご説明では700kgともされる巨大な木です。つい最近長谷寺の立像を見たのでそこまで驚きはしませんでしたが、それでも座像の十一面観音では最大とのこと。リアル丈六の仏さまであります。

「丈六(じょうろく)」とは。

仏さまはみな、人ならざるもの。頭の毛がぎゅるんぎゅるんに丸まって螺髪になっているのも!頭頂部がなぜか盛り上がっている肉髻も!手の平に「水かき」があるのも!ぜーんぶ「仏さまは常人離れしていますよ」という表現です。その表現の中に「とにかくデカいよ!」というものもあり、身長が一丈六尺=4.85メートルあるそうです。

通常はさすがにそんなに大きな仏像は作れませんので、この丈六を基準にして、半分にしたり、逆に大仏さまのように何倍にもしたりします。

櫟野寺さんの十一面観音さまは座った状態で2.4m。座って半丈六、つまりリアル丈六の仏像ということになります。

上の写真を見て頂ければわかるのですが、大きいですが、決して大味な感じはしません。長らく秘仏であったおかげで、彩色もしっかり残っている部分もあります。お顔は優しさよりは威厳を感じる、やや男性的な印象。こんな山里にこれほどの仏像が、と圧巻の大迫力です。

実はこのご本尊以外に、宝物館には非常に多くの十一面観音や聖観音が10体以上安置されておりまして、少々「多すぎる!」と感じました。お坊さんのご説明で、このあたりには「杣川」という川があり、「杣」とは神社仏閣の用材を供給する山林を意味し、その「川」は木材を流して運搬したことを示すとありました。以前丹波の達身寺も山奥におびただしい数の仏像があり、「工房があったのでは?」と言われていましたが、このあたりもそのような工房があってもおかしくはありません。ちなみに、来迎寺のある都祁の近くにも「杣ノ川」という地名があり、興味深い。

さらに、災害の多い地域では、他のお寺の仏像を預かっているお寺もよくありますので、もしやそういう歴史が?とお坊さんに聞いてみたところ、かつては櫟野寺は6つものお寺の集合体で、それらが何らかの理由で廃寺になったあと、仏像を預かったと思われるとのこと。廃仏毀釈なんかも関係したのかもしれません。

中でも印象に残ったのは、弥勒菩薩。実にいいお顔。これがご本尊でも十分の存在感でした。仏師のセンスをびんびん感じました。

 

大満足を味わって、さて帰路。

「同じ道戻るのもなんだし」と、伊賀回りで25号で帰ろう、と思い立ち、4号線を進み、柘植につきます。名阪国道沿いには「都祁」と「柘植」という二つの「つげ」があって、ややこしいです。

25号をあとはひたすらまっすぐや!と思って走りはじめましたが、

まっすぐすぎる。

まっすぐすぎて「いつ終わるんだ」と精神的にキツイ。さらにこの日はかなりの強風が露骨に向い風となります。交通量もそこそこ多く、163号に到達してからは、いつもの地獄の交通量。「100回走ったら絶対一回は死ぬのではないか」と思わせるトラックの風圧。プリウスの無音のあおり!

そんな圧力に耐えかねて、いつものように笠置で163でお別れし、狭川を抜けて嫌になるような傾斜を最後に抜けて、ようやく奈良に戻りました。

朝から130km以上走り、下りですっかり冷え切った身体を転害門カフェで癒します。

ホットミックスジュースという聞き慣れない名前のジュースにチャレンジ。あったまるわぁ~。

こうして盛りだくさんの秋のライドが終了。

もういよいよ、12月。年が明けたら怒濤のやくよけシーズンの到来です。