慈眼寺 副住職ブログ

幸せな結婚式

先日、かつての部活のOGから連絡があり、結婚式の二次会に出てくれないか、と言われました。

日時が施餓鬼ウィークで「うわぁ・・・そこかぁ。若い子に囲まれるのもアレだしなぁ・・・」と思い、ほぼ断る気でいましたが、思い直して参加することにしました。

新婦は思い出深い女の子でした。

高校でほぼ初心者で入ってきて、決してすごく上手ということはありませんでしたが、とにかく真面目。とにかくいい子。いつも練習を休まず、弱音は一度も吐かず、黙々と練習しました。

ちょうどその子もだんだん上手になってきて、試合にも出れるようになってきたところ、その子とは無関係ながら、部内でちょっとしたいざこざがあり、そのあおりで、部活動を私が停止にさせたことがありました。12年やって私が部活を停止させたのはその一度だけです。その事件もなんとか解決したものの、私は精神的にかなり疲れ、ちょっと裏切られた気持ちになって、一度だけ「もう、やめてしまおうかな」と思ってしまいました。

そんなときに、この女の子が、「先生、私の引退まで、絶対にやめないでくださいね」と一言言ってきました。

いつもこの子は、まわりがガヤガヤしていても、落ち込んでいる友達や悲しんでいる子を1人だけ見逃さず、優しい声をかけてあげていた子なのですが、このときは、顧問の私をじっと見つめてくれていて、すっと懐に入って、私の心を見透かしたような言葉をかけてくれました。たぶん本人は覚えていないと思いますが、いまでも本当に記憶に残る言葉です。

「私の引退まではやめないで」という言葉は、けっこうよく言われる言葉なのですが、まぁどっちかというとワガママなニュアンスで、自分たちさえよければいい、みたいな気持ちも多分に入ってるものかなと思うのですが、なぜかこのときの言葉は、違って響きました。

「お前、こんなんで負けたらあかんぞ」

そう言われているような気がして、

「そうやな。それまでは何があってもやめへんで。」

と答えたような気がします。

その後も何度か「そろそろ」と思いましたが、そのたびに「まぁ、こいつらの引退までは」と思える生徒が毎回その度に現れて、気が付けば干支一回りやってしまいましたね。

今回きっぱりやめてしまいましたが、部員のことが嫌いとかそういうことはまるでなく、そろそろ家族第一でいいんじゃないの、という気持ちが強くなったのが大きいです。娘のやりたいことをフォローしたいなと思っています。

母親が死んだ年に私が死ぬとしたら、もう15年しかない。

一方で祖父の年まで私が生きればあと53年も残ってたりするんですが。

まぁ、いずれにしても、娘が喜んだり、調子に乗ったり、泣いたり、怒ったりする顔を見ていると、本当に、びっくりするほど感動的で、毎日毎日大事件みたいに見逃せない瞬間なんですよね。

たぶんこうやって、今回結婚する部員も親御さんに育ててもらったんでしょう。

本当にいい子。たぶん私が見た中で一番優しい子だと思います。

体操服を着た子供って感じだったんですが、お化粧して、綺麗なドレスを着て、本当にきれいな大人になっていました。

大勢の人に囲まれて、祝福されて、それを遠くから見ているだけで、胸がいっぱいでした。

それでも、やっぱり、この子はすごいなぁと思うのですが、そんな大勢の人の人だかりから、私を見つけて、お辞儀をしたり、笑いかけたりするんですよね。どんなに大勢の人がいても、一人一人を見ているんです。

変わらないなぁ、と思いました。

私なんかに、人生の先輩ヅラする資格もないので、何も言う言葉はありませんが、「お前は大丈夫や」ってずっと思いながら、見ていました。

式に集まる人たちもいい人ばかり。

この日初めて知り合った若い女性が「いい人にはいい人が集まるんですね」って言ってましたが、私を除いてみんないい人でしたねぇ(笑)

若い人たちに囲まれて、浮いてたらどうしよう、USJのそばの式場とか絶対浮く!って怯えていましたが、昔一緒に汗をかいたOGたちに囲まれて、目じりが下がりっぱなしの、ただのオッサンという感じで、幸せなひとときでした。周りの人が、「あの女の子テーブルに1人だけいてるオッサンなんなんやろ」と思われているのではないか、というのだけが心配でしたが、途中からどうでもよくなりました。

あ、あと一つショックだったのは、かつての部員が私を見るやいなや、

「先生、めっちゃ落ち着きましたね!」

と言ってきたこと。

逆やろ!普通!先生が生徒にいうセリフやろソレ!俺どんだけ落ち着きのないオッサンやってん!(涙)

 

新郎新婦のお二人と、あの場に集まったすべての方々に、やさしい風が吹きますように。