慈眼寺 副住職ブログ

奈良はやればできる町(YDM)㉒ ”ホンモノ”のタルト専門店

久しぶりのYDMコーナーであります。

だいぶ前の昼下がり、奥さんが「ああ~美味しいケーキを食べたいッ!」とつぶやきました。

世の中には、美味しそうなケーキはたくさんあります。デパ地下行ったらそれこそ宝石箱のように美しいケーキが並びます。

しかし

デパ地下にあるものって、デパ地下で見ている瞬間が最高で、実際家に帰って食べたら、

それほどでも・・・

というモノが多い。お土産系はともかく、ケーキはものすごく有名なお店でも、値段ほどに美味しいですかと言われれば、微妙であります。いや、よそ様に頂けるなら美味しいのですが。わざわざ大阪まで行って、高いお金を払って買ってまで、という価値があるかと言えば、結構微妙であります。

自分は、高校・大学と近鉄で大阪行ってますので、それでも40分くらいかけて行って、幸せになれるお店と言えば、上本町に一軒、必ず満足できるお店があります。

じゃあ奈良は?もちろん有名なお店はあります。美味しいとは思います。でも、自分の好みドンピシャ!と言わしめるお店があるかと言えば、ちょっと決め手に欠けるなぁという状態で42年。

ついにココだ!と思えるタルト屋さんを発見であります。

タルトって微妙なケーキだと思います。イチゴのショートは、ケーキのイデアと言いますか、「いかにも」な感じなので満足も得やすい。でも、タルトの家庭的な感じとかバリエーションとか、ある意味でケーキの原点なような気もします。いや、私、ケーキの専門家でもなんでもないのですが。

そしてその日。奥さん子供を連れて車で、ネットで調べたケーキ屋さんに向かいました。

少し遠い、いやかなり遠いそのお店についたとき、正直、「アレ?間違ったかな?」と思いました。どうも規模が小さい。照明が暗い。食べるスペースがなく、販売のみ。その日はその場で食べたかったので、失敗したかなと。

店名にKonditoreiとありますから、ドイツ系でしょう。シンプルなんだろうなと。塾のバイトで稼いだお金でドイツに行ったときはスーパーのイートインコーナーでアンズのパイばっかり食べてたので、筑紫哲也みたいな顔のドイツ人のおばさんに「ああ、アンズのヤパーナーね」みたいなぞんざいな扱いを受けておりました。語学研修のあとの3週間のヨーロッパ一人旅のときは、でかいリュックを背負ってドイツの子供用のタンクトップ姿でデーメルやザッハーでお茶したり、オシャレなカフェのテラスでアプフェルシュトゥルーデルを食べてました。完全に場違いでした。

おそるおそる店内に入ると、同年代くらいの女性が出迎えてくれました。HPでは「ケーキ道」という言葉が出てきていたので、もっと怖い人を想像していましたが、そんな「ケーキの鬼」みたいな怖い人ではありませんでした。想像通り地味なドイツっぽいラインナップのなか、娘用にイチゴとクリームが乗ったもの、私はリンゴと紅茶のタルトなどを買いまして、お店をあとにしました。

どうしてもお店で食べたい気分だったので、そのあともう一軒別のお店に行きましたが、こっちは完全にハズレ。

意気消沈した私たちは、その日二つもケーキを食べる気はなく、明日の朝食べよう、とそのタルトは冷蔵庫に・・・。

しかし、夜中にどうしてもおなかがすいた食い意地の張った私が、自分の分だけこっそり食べようとタルトをとろうとしたそのとき!悲劇が!

娘のイチゴタルトがスルッと落ちて床に!!!

ああ無情!高校の校長先生が、「日本の戦後の復興はミゼラブルですよ!!!」と力説していたのを思い出します。ミラクルと言いたかったのだと思います。

慌てて確認すると、タルト生地はほぼ大丈夫ですが、上の御輿が悲惨。3秒ルール!と叫びながら慌てて残骸を拾い集め、ドレスデンのフラウエンキルヘのように修復。しかし形は無残に崩れております。まぁ、味は一緒だよね!と手についたクリームをひと舐め。

「ん!!!」

脳裏に電光のように閃く言葉。

「ホンモノ」

コイツはホンモノや。ホンモノの味や。素人だけど、これは明らかに違う。クリームの香り、タルトの残骸を噛んだ瞬間に立ちのぼる、上品なバターの芳香。そしてイチゴ本体を食べてないにも関わらず、弾けるように口に広がる新鮮な香り。畑で取ったばかりのような。

まるでケーキ職人に弟子入りした見習いがこっそり味を盗むような出会い方をした衝撃の味。そのまま自分用のリンゴのタルトを食べ、やっぱりおいしくて、困ってしまいます。ああ、これはいわゆる、ホンモノやなと。何も分からん素人が勝手にホンモノ認定しても何の意味もないですが。奥さんも翌朝食べて大満足。娘も私の修復したケーキで大大満足!どうせ、食べやすいように小さくしますしね!(汗)

いや、改めてタルトって難しいんじゃないかと思うんです。有名なタルトのお店、ありますよ。毎日すごい行列でね。私、遠くの本店も行きました。そっちも大行列。色とりどりの果物が乗っててね。宝石箱みたいですよ。インスタ映えすごいですよ。でもね。ケーキとしておいしいかといいますと、素人が何を、となりますけれども、「フルーツと、タルトを、別々に食べている」そんな感じしかしないんですよ。一体感がない。

インスタ映え最高なんですよ。でも、たぶんSNSにアップするときが最高点なんじゃないですかね。フルーツが普通においしくて、そのあと、敗戦処理のようにボソボソした硬いタルトを処理するんです。そこに繋がりがない。

その点、ここのは違う。上物のお御輿の存在感は控えめ。インスタ映えはしません。生クリーム系フレッシュタルトはともかく、メインは焼きの入った洋梨やリンゴやナッツのシンプルなタルト。でも、最初に鮮烈、次にあっさり目のカスタード、最後にバターの香ばしい香りの生地がくる。食べる順番に味が変わり、起承転結がある。最後の地味なはずの生地が一番人の手がかかっている気がする。これは美味しいですね。あくまで素人の私個人の感想ですが、これはホンモノだと強く思います。私の判断を笑う方もいるかもしれませんが、そんなものは私の口の外の話ですからね。

そして先日、満を持して奥さんの誕生日にワンホール注文です。

ああ、夢のある!

寄せてみましょう。

イチゴがすごい。とにかくイチゴが土砂崩れ寸前で絶妙なバランス。加藤清正が組んだように絶妙の配置。

改めて食べてやっぱり美味しい。最後まで美味しい。むしろ、最後がおいしい。
このタイプは生クリームじゃないのですが、いつもはカスタードクリームが嫌いでシュークリームも食べない娘が「コレは美味しいから食べるー」と食べてしまいます。

ああ、お店の名前を言い忘れていました。(わざと焦らしてみました)

コンディトライ・デティさんと言います。一気に読むとどこで区切れるか分からないですね。デティが店名ですね。コンディトライはケーキ屋さんくらいの意味ですから。ちなみにパン屋はベカライですね。

http://www.konditorei-detti.com/

しつこいですけど、個人的にホンモノだと思います。

今度はショコラとか、洋梨とか、チェリーのシュトロイゼルとか食べたいですねー。個人的に問題は一つだけ。自転車で行ってもイートインスペースがないのと、持って帰るのも難しいところ。まぁ、自転車で来るなという話なのですが。

いや~奈良県にもこんなに美味しいケーキ屋あったんだなぁ。どっかのコーヒーショップのレジ横のスカスカのスコーンなんか食べてる場合じゃないッスよ。やればできるなぁ。やればできちゃうなぁ。奈良。