慈眼寺 副住職ブログ

ストロング・スタイル

バドミントンのお話です。

先日、ミックスダブルスをやっていて、ちょっと点差が開いてしまったので、フェイント多めでかわすバドミントンをやったんです。
すると、組んでた女性が、「わあ!そんなプレーのイメージなかったわ!」とおっしゃったんです。
基本バカみたいに疲れるまで打つので、意外だったようです。もう20年以上やっていれば、たいていのことはできるんですけど、フェイントに凝るにしても、意味のあるフェイントしかやりたくないので、普段はあまりやりません。フェントが嫌なのではなく、フェイントのためのフェイントが嫌いなんです。

ときどき華麗なフェイントを入れて敵を幻惑する人がいます。上手だなと思います。
プロ選手がお遊びでトリッキーなプレーをショー的に見せてくれる画像も見ることができます。

しかし、若い人や、まだ上手じゃない人がああいうテクニック、というより曲芸に走るのは全然感心しないんですよねぇ。
アレは基本がばっちりできた上手い人がたまにやるから利くんであって、手元の技術をゲーム中にコネコネやられて勝手にミスして自己満足で失点されるのは、「うーん、一人でやってほしいなぁ」と思ってしまいます。

上手な人がフェイントかけてきても対応し続けると、結局ミスの少ない正攻法に切り替えるんですよね。
だから初対面のトリッキーな人にフェイントをやめさせて正攻法に引きずり込んだら、ようやく「認めてもらった」という気になりますね。
もちろん、最後まで遊ばれて終わることもあるんですけど(泣)

そもそも、本当に上手い人は、普通にやってるだけでスマッシュが怖すぎて、こっちが身構えてしまうので、何打っても天然のフェイントになっちゃうんですよね。どうしようもない。本当に、直前まで何打つか全く分からない。それに比べたら手元でこねくりまわすフェイントは対応が簡単です。

フェイントって、「裏をかく」ということです。
右かなと思ったら左でした。コレです。

対応するにはどうすればいいのでしょうか。

右か、左かを予想する?

違いますよね。
ギリギリまで動かずに打った方に急いで動けばいいだけなんですね。

だって選択肢には「表」と「裏」しかないわけで、「裏の裏」って結局「表」ですから。
「右と見せかけて左」は左に動けばいいし、「右と見せかけて左、と見せかけて右」なんて、ただの「右」ですから。その場にいたらただの「右」なわけです。

だからギリギリまで待って、素早く打った方に動けばいいだけ。変に先に動くのはフットワークが遅いから早めに始動しなければいけないわけです。
極論、いかにはやくシャトルにタッチするか、いかにはやく落下点に移動するか。少しづつ相手よりはやく、はやく動いて詰めていって、最後は悠々と決めるわけです。正攻法です。ストロング・スタイル。これ以上に価値のあるものなんてないわけです。

フェイントは一瞬相手に逆をつかせたり、ギリギリまでそこにとどまらせて、相手の時間を奪うために行うものであって、それで全てが決まるなんてよほどの実力差があるときだけなんですよね。つまり自分より弱い人にしか通用しない技術なんです。だから、フェイントの練習にばかり時間を費やす人は、結局必死になって弱いものいじめの練習をしているだけなんです。そんなことをしているあいだに、目の前の人は強くなっていくわけです。フェイントはプロセス。フィニッシュではない。

結局ものすごく強い人は、単純にすごく素早くて、すごく強い球を撃って、ミスが全然ない。

ただそれだけなんですよね。基本がとんでもなくできているから、どんな体勢でも色んな球が打てる。
そんな人に、なれないですけど、せめて目指したい。そう思ってるので、40歳になっても正攻法です。ストロングじゃないけどストロングスタイルを採りたい、目指したい。これはバドミントンだけじゃなく、何にでも言えることだと思います。