慈眼寺 副住職ブログ

おじいちゃんの雛人形

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以前、http://www.nara-jigenji.com/diary/1825/のときに書きましたが、私の母方の祖父はとにかくなんでもできる「下町のレオナルドダヴィンチ」とでも言うべき、セミプロレヴェルでの万能の天才でした。父方の祖父で先代の住職はめちゃくちゃ頭がよかったらしく、奈良高校の前身、奈良中の一期生の首席だったとか。両方のDNAを全く活かしていない孫です。

さて、その万能のおじいちゃん、「銃剣道が弱いくせに威張ってる」という理由で上官を殴って営巣入りしたりろくなことしてない人でしたが、私は大好きでした。ときどきそのおじいちゃんの作品を紹介していきますが、今日はコレ!雛人形です!

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 見てください。コレ、完全に手作りです。子供の頃、よその家の立派な何段もあるでかい雛人形見ましたが、全然羨ましくなかったですね。これは妹も同じ意見だと思います。

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 めちゃくちゃ味があるでしょ?そして芸が細かい!鼓や笛もお神酒も全部こんなちっちゃいのまで作ってます。牛車や籠まであります。桃の花や松の表現も素晴らしい。屏風の絵もおじいちゃんが描いてるのです。もちろんこのお雛様を飾っている階段も、手作り。赤い「もうせん」=絨毯は画鋲で止めます。そして一番いいのは準備も片付けも楽!ということ!全部そっくりこの階段の中に入ります。ティッシュでくるんで入れるだけ!それぞれの表情がいいでしょ?特に三人官女のふっくらした顔なんてもうたまりません。絶妙にちょっと不美人です。だがそこがいい。

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 これはおじいちゃんが母のために作った雛人形です。母が嫁入りのとき、持ってきました。妹も小さいときはよくこれで遊びました。そしてここからがさらにすごいのですが、おじいちゃんは女の子が生まれるたびに、このセットを増やしていったのです。まず、このオリジナルが私の家にやってきました。そのあと、母の弟に娘が生まれたので、さらに1セット作りました。さらにもう一人の母の弟に娘が生まれるとさらに1セット。私の妹が嫁入りするとさらに1セット。計4セットもの雛人形です。もしおじいちゃんが生きていればあと3セット作らねばならなくなっていたことになります。ひ孫に女の子三人なので。

正直「敵」と見なすととことん戦うただの乱暴者なところもありましたが、身内にはとことん甘い。普段はウイスキーばっかり呑んで巨人戦とチャンバラと刑事モノだけ見てこたつで寝転がってて、寝てるからチャンネル変えたら怒るという典型的な昭和のおじいちゃんでした。今こんなおじいちゃんがいる風景がないでしょ?今思えばめちゃくちゃいい経験させてもらいました。なんでもないようなことが~幸せだったと思ぉう~♪です。あの人も噛み締めていることでしょう。そして道具箱を開ければ完全にプロ仕様の道具で黙々と朝から何か彫ったり削ったりです。そんなおじいちゃんの傑作がこの雛人形です。そして、母が受け継いだ雛人形です。ですから、この人形は二人の形見でもあります。そして私の娘が受け継いでゆく最高の宝物です。

誰がなんと言おうと世界一の雛人形だと思います。そしてこの雛人形が乗っている台は、もう一人の父方の祖父が故郷の福井県の三国から持ってきた舟箪笥。今年は娘がひっぱるので外していますが、その上にはその祖父が生前使っていた古い袈裟の切れ端を敷物にして、上に引いています。ダブルおじいちゃんのコラボですね。

 二人のおじいちゃんの才能は一切継いでいない非才の私ですが、せめてこの二人のことを自慢して、娘に「前もその話聞いたー」と煙たがられるのが、父として、昭和生まれの男として、そしておじいちゃんの孫としての務めだと思っています。