慈眼寺 副住職ブログ

PANTAREI type-R

あっという間にパンタレイを組み上げた店長。
あくまで、名目上(奥さん向け)は「ズッロの自転車のデモ車」という位置づけになっており、間違っても店長の個人的物欲で購入されたフレームではありません。その証明のためにも、「ラガメン誰でも試乗していいよ」というお達し。やった!

ただし、試乗の条件が一つだけあります。それは・・・

「店長がパンタレイに乗った感覚についての与太話をたっぷり聞くこと」

毎週やってるから余裕ッス。何なら貯金溜まってるくらいよ。

そんなわけで仕事帰りにラガッツィに立ち寄り、試乗してみました!

さてさて、どんな乗り心地かな・・・

そもそも、このパンタレイのフレームに使われているパイプ(鋼管)はコロンバスspirit。
鉄フレームのことを一般的に「クロモリ」と言いますが、これはクロームモリブデン鋼という意味。

しかし、どんどん新たな鋼材が現われ、このspritはニオビウム鋼といって自動車や石油のパイプラインなんかにも使われる素材。他にもマンガンモリブデン鋼、ニバクロム鋼や、カイセイ8630Rのニッケルクロムモリブデン鋼なんかがあり、一口に「鉄」と言っても実に多種多様な素材があります。さらに、この鋼材をもとに、形状を単なる円形パイプではなく、オーバル(長円)形状にしたり、厚さを部位によって変えたり、オーバル形状にねじりが加えられたりして、強度や感触を自由自在に変えることで、意図した用途に適した「味」を出せるようになっています。spiritなんかは最も薄い部分で0.38mm!薄くて、デカいパイプという感じ。

したがって、よく言われるような、「細身のクロモリ。ホリゾンタル。しなり。」みたいな散々使い古された言葉は、「鉄」という素材をめちゃくちゃ大雑把に捉えたものに過ぎないんですよね。そういうオーソドックスな鉄こそあるべき姿っていうのは、ちょっと考え方としてもったいな、という感じがします。

そのへんを踏まえて、いざ、試乗。

主に木津川CR、強風の中、直線と少しの登りで15分ほど走っただけのレヴューです。

パンタレイに乗るのは以前のグリーンの試乗車以来二回目ですが、アレは安田さんサイズのどでかいフレーム。今度は自分よりやや小さいフレームでしたが、やはり際立つ硬さ。初動はやや重さが目立つのは仕方ないですが、スピードに乗れば乗るほど、楽しさが出てきます。35㎞を超えたあたりから格段に軽さの方が目立ちます。登りもキビキビ登ります。下りの安定性はカーボン以上。そしてそうしたあらゆるシチュエーションで、身体中で、フレームの「芯」と言いますか、「硬さ」というべきか、「剛性感」とでもいうのか、とにかくガツン!とした直進方向の揺るぎないベクトルを感じます。

この感覚はcasatiのlazerでも感じた感覚。要は、カーボン的、ステンレス的な感覚を鉄で再現しようとすると、こういう味付けに集約していくのでしょうか。

同じcasatiでもリネアオロは、もうひたすらスイスイ気持ちいい感じ。どこまでも乗りたい感じ。逆に言えば、レース向けかと言われれば、少し違うのかもしれません。それでも踏めばガンガンに走れるのですが、それはそれ、我々のような一般のオッサンがちょっと頑張ろうが知れてるわけですよね。やはりレースを主戦場に頑張る「ロードレーサー」の方々の脚で踏めば、やはりパンタレイ的な硬さは非常に好ましいものになるのでしょう。

私の愛車もかなり快適方面ですので、こういう戦闘車もほしいような、うーん、ここまで要らないのかもなと思ったり。

しかしただの戦闘バイクと違うのは、やっぱり塗装の美しさですよね。乗車姿勢からついついフレームの深みのあるパールホワイトや、藍色のグラデーションに見とれてしまい、危ない危ない!と我に返る私。眺めるより、乗った方が美しさが分かるのはcasatiにも共通します。罪なフレームだぜ・・・。

基本的には、レーススペックを求めれば、カーボン一択なわけで、そこでわざわざコレを選ぶというのは、よほどのひねくれ者か、ただの鉄マニアか。

お店に戻って店長と与太話タイム。

基本的には、普段から散々同じような話をしている間柄なので、「そうそう!やっぱそうだよな!」みたいな感じで案外あっさり終了。「昔ガンガン乗ってたおっさんが、牙を隠して乗っててほしい大人のフレーム」という、わかったようなわからんような喩えをしながら、楽しく与太話しました。

戦闘車両に乗ってちょっと気が引き締まった私は、ロングライド仕様で高め設定していたハンドルのスペーサーを抜いて、ハンドル落差をつけて帰宅。ただし、もっとおっさんになったとき、いつでもお気楽ポジションに戻せるように、スペーサーは上に残していますけれども(笑)