慈眼寺 副住職ブログ

北の地獄 パリ~ルーベ

パリルーベ6

さて、だんだん暖かくなってまいりました。

ぼちぼち自転車も始動しております。ずっと体調が悪く、午も控えておりましたので、ずっと自転車は遠慮していましたが、ぼちぼち乗っています。言ってる間に3月22日にはミラノ~サンレモがスタートして、2015シーズン開幕です。先日はツアーオブジャパンの話をしましたが、今日は海外のレースの話を先取りしてお話します。今日は、「北の地獄」パリ・ルーベのお話です。

私は海外レースを見始めて日が浅いのですが、やっぱりツール・ド・フランスが一番面白いです。じゃあ、二番目は何か。それがこのパリ・ルーベでしょう。たぶん、素人受けしやすいというか、自転車に興味がない人でも、この二つは楽しめると思います。それで今回紹介しています。

まずこの写真を見てください。

パリルーベ    

冗談だと思いました?前衛芸術?妖怪泥田坊?「田を返せ~!」って?違います。レース風景です。なぜこんなことになってしまうのか?それはパリ・ルーベに代表される「クラシックレース」という種類のレースの特徴によります。

「クラシックレース」というのは、昔ながらの形式のレースで、ツアー形式で何週間も行うレースと違い、ワンデーレースです。距離はだいたい250キロとかそんなもんで、ツアー形式のレースのだいたい一日分かちょっと長いだけ。じゃあ、楽なのか?っていうと、それがとんでもない。なんといっても「北の地獄」ですから。楽ではなくさせている最大の要因が、このパヴェです。

パリルーベ4

パヴェとは、石畳区間のこと。完全な舗装された道路だけではなく、ところどころに、パリ・ルーベの場合は27箇所に、この石畳区間がわざわざ用意されています。これがもうとんでもない場所です。ロードバイクのあの細い細いタイヤで、こんなところを走ったらどうなるか。彼らは基本、生身で原チャリより速い人たちです。そのパワーでこんなガタガタ道を走ったら・・・。まず脳みそが揺れまくる。さらにはめっちゃこける。パンクする。雨が降ったらもう最悪です。水溜りができてそこに突っ込んでいきます。結果、こうなってしまうわけです。

パリルーベ3

パヴェの状態はガッタガタでほとんど修復されません。普段は自動車も走るので轍もできてます。この区間では、いかにいい位置取りをするか、が非常に重要になってきます。最初にパヴェに入れれば、一番安全な真ん中や端っこなどのやや平坦な場所を取れます。ですから彼らは各パヴェを十分試走して完全にそのコースを頭に入れています。どのパヴェのどこらへんの石畳が荒れているのか、全て想定して走っています。しかし、それでも十分ではありません。もし遅れをとって大人数でパヴェになだれ込んだらコースなんて選べなくなります。ただでさえ密集してると危ないのに、下はガタガタなわけです。当然大落車も起こりえます。平均50キロ近い速度で走る彼らが落車したら、容易に骨折してしまいます。もし幸運にも落車を免れても、前方で大落車が起これば渋滞が起きて前に進めず、大幅なタイムロスになります。それゆえ、パヴェの攻略法だけでなく、パヴェまでの場所取りの失敗が命取りになります。

パリルーベ5 パリルーベ2

そもそも4月のパリなんてまだまだ寒いです。「お水取りが終わらないことには・・・」なんてぬるいこと言ってる場合じゃないです。真冬ではない、というだけの気候で、雨もよく振ります。雨で寒い日のパリ・ルーベは本当に見てて悲惨です。「フランス残酷物語」と呼んで差し支えないと思います。去年もかなり悲惨でした。

そんなもん見て何が楽しいの?って話ですが、楽しいんです。ツールやジロなどの近代レースは、各チームのエースを守って大集団でガチガチの展開がほとんどで、有名人はとにかくお姫様のように守られて、勝負どころは各ステージのゴール前だけです。しかもそれぞれの得意ステージというのがあり、やる前から「まぁ、今日はコイツ勝つよな」という奴がだいたい勝ちます。どんでん返しはまぁ、滅多にないです。それでもたまーにあるどんでん返しをワクワクしつつ待ち、それがなければ、強い奴が普通に強いのを見て、「やっぱすげぇな」と頷くという、自分で書いてても何が楽しいのか全くわからないのが自転車レースです。ああ、そして優勝するのはだいたい細長~いひょろっとしたやつです。

しかしクラシックは違います。揺れまくるハンドルを腕の力で押さえつけて、脳を揺さぶられてもへこたれない、ちょっとくらいこけても平気で、パヴェを力でねじ伏せるようなパワー馬鹿のバッファローマンみたいな人が押し切ってしまいます。ガテン系のパラダイスです。さらにパヴェが絡むことでスリリングな展開があり、パヴェにそなえるために普通の区間も緊張感があります。あ、そうだ。女子も大好きイケメンもいます。クラシックに強いイケメン。

カンチェラーラ

こんなイケメンが大活躍しますよ!

あと、お客さんがバカみたいに近いのも魅力です。とくにルーベはベルギー国境なので、「自転車が国技」という冗談みたいなベルギー人が阪神ファンと広島ファンを足したまま割らないみたいな応援をしています。ベルギーはチョコやワッフルの国ではないのです。自転車の国です!そしてこのベルギー人の岸和田のだんじりのような応援もパリ・ルーベの魅力です。

正直、自転車レースって、今まで見たどのスポーツとも違う、変すぎるスポーツで、自転車に乗ってない人からすればもうワケわかんない、乗っててもワケわかんない、参入障壁の異常に高いスポーツですが、いっぺんハマると本当にやめられません。ツールの時期になると、毎晩夜中までの観戦を3週間ほど続けますのでこっちの体力も限界きます。それでも見ちゃうほど楽しいものなので、ツール・ド・フランスが始まる前に、少しでも自転車レースを紹介したくて、まずは一日で終わって見どころもわかりやすいパリ・ルーベを、あらかじめご紹介しました。誰にニーズがあるのかわからない記事ですが、お許し下さい。