慈眼寺 副住職ブログ

ご縁

先日のパンク事件のときに助けて頂いた方にお礼を言いに、本日言ってまいりました。

車で送って頂いた方に、お名前や住所をお聞きしても、「お礼とか要らないので」の一点張り。そこでよもやま話をしていると、お仕事がバウムクーヘンのお店をなさっていると聞いて、それを手掛かりにネット検索をかけると、一瞬で分かってしまいました。怖い時代ですね(笑)

と、いうか、調べてみてビックリしたんですが、超有名なお店だったんです。

なんでも、あの「今でしょ!」の林先生がTV番組で紹介したくらいで、予約が数か月先まで埋まっている超人気お取り寄せ専門店とのこと。天然素材にこだわり、ドイツの伝統的な製法で一人で手作りで作られているとのこと。なんか、すごい人に助けてもらったんですね・・・。

自転車で(もうパンクは直しました!)お礼に行ってもよかったんですが、「お前また性懲りもなく・・・」と思われてもアレなので、車でお店を探し(と言っても、店内で食べられるいわゆる「お店」ではないのですが)、先日のお礼を言ってきました。

お忙しい方なので、ほんの心ばかりのものだけ渡してさっさと行こうとしましたが、かえって気を遣わせてしまったようで、「これどうぞ」とバウムクーヘンを少し頂いてしまいました・・・。先方も気を遣わないようにと「切れ端だから」とおっしゃったのですが、車で送ってもらって何か月も先まで予約が埋まっているお店の商品をもらって、もうなんだか。実は既に注文はしているのですが、食べられるのはずっと先。申し訳ないやら、食べたいやらで、結局食べたい方を優先して家族で食べました。

もう、めちゃくちゃおいしかったですね。

職業柄、バウムクーヘン、よくもらうんですよ。でも、違いましたね。ものすごく丁寧に作ってあるのが分かります。いや、助けてもらったから誉めてるのではなくね。お坊さんは嘘ついたらダメですからね。

まず最初に思ったのが外側の焼けてる面の美しさですよね。ああいう色のバウムクーヘンは初めて見ました。今まで当たり前だと思ってたペンキで塗ったような色じゃないんですね。パンの焼き目みたいな、自然なグラデーションのある表面。外側見てかじりつきたい!って思うバウムクーヘンって、経験ないです。

で、食べてみました。

生地がすごくしっとりしています。絶妙です。そして甘さも自然な甘さ。くどくない。ひと噛みごとに口に優しく広がるんですね。本当に水分が絶妙で。過剰なものが何もない。少し温めるとまた絶品で。よくあるお土産のバウムクーヘンは甘さにすぐ飽きるんですが、これはおいしい食パンのように飽きずに食べられて、同時に豊かな甘さに贅沢な気分も味わえる。いやぁ美味しかったです。注文した商品が届くのが楽しみです。

ちなみにそのお店がこちらです。デルベアさん。

http://www.derbar.jp/

紹介してお客さんが増えて仕事しんどくなったら迷惑かなとか思ったんですが、よく考えたら林先生が紹介したあとで、慈眼寺が紹介しても、海にコップの水を足すようなものなので、今さら何の影響もないことに気づきました。

さて、そのあとは、童仙房で声をかけて下さった奥様にお礼を言いに。やはり車で向かいました。

163号から山道へ。自転車で行くと気づかなかったのですが、ものすごい道ですね。何で僕いつもこんな道を好き好んで乗っているのだろう。自転車の3倍くらい疲れました。自転車で行くと、「緩めの坂が延々繰り返すわりとしんどい道」としか思わないのですが、車だと対向車来たらどうしようといつも怯える始末。逆に自転車だと163号はなるべく走りたくないので不思議なものです。

この童仙房、伝承では敏達天皇のころに遡る地名を持つ場所ですが、確実な資料が残るのは明治の開拓以来。「泥おん寺」という無住のお寺があったりするのですが、これで「ないおんじ」と読むそうです。泥を「ない」と読むの、初めて見ました。「おん」はさんずいに亘と書きます。これまた見たことのない字ですが、湿地だったんですかねぇ。一応浄土真宗らしいです。後醍醐天皇が犬打峠を越えたことは何度かこのブログで書きましたが、そのとき、後醍醐天皇の皇女と乳母がこの地へ逃げ込み、身を投げたという伝承もあるそうです。歴史のロマンのあるところです。個人的には南北朝時代はツボなのでこういう話はすごく楽しいですね。兼務している都祁村の来迎寺付近にも後醍醐天皇ゆかりのスズラン群生地があります。南朝の勢力圏には必ずと言っていいほど後醍醐天皇や北畠家の足跡があるので、自転車で走っていると盛り上がります。

さて自転車の3倍つらい思いをして童仙房につき、あの時の奥様の家についたのですが、玄関は空いているのにご不在でした。車を汚さないようにと敷物をお借りしたので、それと、先ほどと同じ心ばかりのものを少し置いて帰りました。失礼かなとは思ったのですが、雪や雨ですぐに来れなくなる場所ですし、道路工事も始まります。次いつこれるか分かりませんので、会ってお礼を言うのは今度自転車で来てしようと思います。

まぁそんなこんなで先日のお礼行脚を、なんとかかんとかしてきたのですが、このご時世に、親切な人はまだまだいるんだなぁというのが率直な印象です。町中で運転しているとついつい心がざわつくことが多いですが、山の中ではちっぽけな自分を骨身にしみて思い知らされます。えらい目にあったなと嘆いていたのが、不思議なご縁で親切な方に出会い、おいしいバウムクーヘンまで食べられて、まことに禍福は糾える縄の如し。

ちょっとわらしべ長者みたいな、いやむしろ浦島太郎の亀?な副住職であります。