慈眼寺 副住職ブログ

ハイランダー

自転車仲間は日々、面白く生活しています。

ただただ速さを競うこともあります。峠に登るタイムにこだわる人もいます。
MSNに「今ここにいまーす」と、とんでもない場所にいる写真をアップする人もいる。

みながお互いを羨ましがったり、「おおすげぇ!」とビックリしたりしながら、新たな領域を開拓した仲間の「男」を称えます。(この場合の「男」とは性別のことではなく、その無謀なチャレンジを象徴的に表現しております。性差別の意図はないつもりであります。女性ももちろん「男」です!)

「ちょっ!!?鳥取!?」

っと大笑いしたり、その人が帰りに遅れて夜中に「今、南丹市です・・・」とか報告してるのに心配しつつ大笑いしたり、サイクルコンピューターに「300㎞」という表示を見せたいがためだけに敦賀まで往復したり、志摩までいく途中パールロードがきつすぎて泣いたり、豪雨の中若狭湾を目指したり。

いつも同じじゃつまらない。アワイチ・ビワイチばっかじゃつまらないわけです。
だから通は斜め上の考え方で、

「もう一周すればいいじゃん」

と、「ビワニ」なんて、どう考えてもおかしいことをやっちゃう。

最初「ビワニ」って聞いて、意味わかりませんでしたもん。ドラクエの新しい呪文なのかと。(でも案外やっちゃった人いるんですよね。怖いわー。)

要は、誰も行ったことのない場所や、誰もやったことのないことを、事もなげに(実は必死で)、やり遂げて、

「こんなもんや」

と、コンビニでコーヒーを飲む。

正直ただの子供に機材と体力を与えただけと言いますか、蛮勇と言いますか、ただのアホなのですが、そのへんの妙な連帯感が、たまらなく楽しい。みんなが次々と新しい場所やジャンルを開拓していく。それを「やりよったな!」と思い、自分も奮い立つ。それが楽しい。

すごいねすごいねと見てるだけではカッコ悪い。線路を歩いてスタンドバイミーですか?男は黙ってスタンドアローンですよね。

そんなわけで、ひっそりと先日、ロングライド行ってきました。関西の自転車乗りに有名な場所、

大台ケ原に。

当日本当は5時に出たかったのですが、朝に用事が入り、8時出発。ロングライドの朝の3時間ってすごく響くんで、痛かったんですが、まぁなにもかも思い通りにはなりません。

以前金峯山寺に行ったときに、吉野のトンネルが嫌だったので、今回は169号をひたすら南下することにしました。

それが大間違いでした。

通勤渋滞を避けて、伊勢本街道の奈良区間「奈良上街道」を通ります。
帯解寺を越えて天理付近までくると、一旦東の石上神宮を通る道まで移動して車の混雑を避けます。そのまま南下すると大和神社のところで169号と合流します。さらにそのまま南下して箸墓古墳を左手に見ながら、箸中南の交差点を左側に進みます。この169号が二股に分かれるところ、どっちを選んでも大差ないんですが、でもやっぱりスムーズな移動を考えるとロスは最小限に。左の道を選んで大神神社の前を通ります。169号は神社だらけです。

どん突きの「谷」の交差点で左折、ちょっと宇陀方面に東上してからファミリーマートで右折。県道37号桜井吉野線をひたすらまっすぐ。ここは以前聖林寺や談山神社へ行ったときに来たので余裕ッス。今日はそのままスルーして吉野へ抜けます。ここからは初めて。

わりときつい傾斜を登っていくと、あ。トンネル。

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「新鹿路トンネル」?なんか綺麗なトンネルだなぁ~と特に深く考えず、突入。

ん?

んん?

んんんんん?

長ーーーーーーーーーーーーい!!!

いつ終わるの?いつ終わるの?って・・・

2.4kmーーー!!!

どんだけやねん。
第二阪奈の生駒トンネルが5km以上あるのに比べれば短いですが、あっちは高速道路。車でしか行きません。自転車で2.4kmひたすらトンネルは怖い!怖い!路肩も一応あるけど、狭い。しかもトラックばんばんくる。コワー!

このコワー!状態が2.4kmですよ。怖すぎるッス。きっと車の人も、「なんで自転車やねん!」とビビっていることでしょう。

一応迂回路として右から登る旧道がありますが、このトンネル分迂回するとなると相当きつそう。しかもあとで分かったのですが、こっちにも旧鹿路トンネルがあり、こっちは「心霊スポット」!苦手!お坊さんだけど、そういうの、苦手!

ようやくトンネルを抜け、吉野に到着。吉野も世界遺産になってるので表示が多くて分かりやすい。

ローソンの交差点で吉野川に合流し、169号に復帰します。あとはひたすら南下。吉野から、川上村へ。
最初は自然が綺麗だなぁなんてのんびりしていましたが、どこまで行っても、右を見ても左を見ても山。山。山。

ちょっと不安になるほどの、山。ここまでくると山に呑まれそうで、恐い。ひと漕ぎごとに、「海は死にますか。山は死にますか。」と問いかけたくなるほどの圧倒的な自然。

そして迫りくる異常な数のトンネル!ちょっと、信じられないくらいトンネルがあります。きれいなのもあれば、暗くて古いのもあります。基本路面も濡れています。こけたらどうしようと思うと本当に怖い。そしてやはりトラックばんばん。トンネル避けてきたはずなのに、トンネル地獄です。もっとよく地図を見ていればよかった・・・。

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しばらくすると大滝ダム。かなりでかいですねここ。このダムからしばらくすると川上村の道の駅があると表示があったのでそこでご飯をたべることにしました。しかしついてみると、想像より小さい。メニューもやきそばとかカレーとかをテイクアウトする形式。コレ、今の基準で「道の駅」っていうにはだいぶ厳しいのでは…。

パンでも買おうかと思いましたが、美杉付近のすごく不便なところにありがちな、賞味期限の長いパサパサしたパンしかありません。せめてもうちょっとご当地系の何かとか、ないのかと探しましたが柿の葉寿司しかなし。柿の葉寿司、奈良駅で買えるし。

そんなわけで、道の駅の手前のログハウス「season」まで戻って食事しました。ネットの口コミで「ガッツリ食いたいなら、この付近にはここしかない」とありましたので。日替わり定食850円だったかそんなのでしたが、うどんが美味しかったです。

本当に、店がないというのは本当で、このあとも行けども行けども、山、山、山。時折現れる狭い平地に家が建て込んで、あとはまたずっと山、山、トンネル、山。「自然に囲まれて落ち着く」っていうレベルを超えています。田んぼとかないし。人と全く会わない。

途中ちょっと目を引いたのが、

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鍾乳洞のようです。

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「喫茶・軽食 ホラ‼あな」がたまらない昭和センスです。

不動窟を超えるとまたダム。大迫ダムです。一日に二発連続でダムを見るとは・・・。

そしてここから傾斜が一気にきつくなり、トンネルが連続します。本当にえぐい。トンネル抜けて、数メートルでまたトンネル。5連続トンネルとか狂気の沙汰。地図上で見ると、複数のトンネルをつないで360度一回転しています。なんでこんな道になっているのでしょう?要は斜面を登っているのでしょうが、一回転するカーブの標識とか初めてみました。標識の写真撮ればよかったのですが、余裕なさすぎで撮れませんでした。今日はいったい幾つトンネルを越えたのか・・・。

しかもそのうち一つは、出口に大量の献花が・・・。あとで見たら8月に事故があったんですね。合掌して通り過ぎました。

本当に、一つ間違えば、車だろうと自転車だろうと一瞬で・・・。もう楽しいサイクリング気分とか完全に消えています。

気を取り直して、最後のトンネルを抜けると、ついに来た!目の前に「大台ケ原ドライブウェイ」の文字。

ここは「ヒルクライム 大台ケ原」という有名な大会のあるところで、28kmもの長い急傾斜をひたすら登る、とんでもない大会の開かれる場所。ハードさは分かっていたので、車で来て自転車を降ろして乗るか、自走で現地まで行って帰るかで、結構悩みましたが・・・

男ですので!

完全自走、やらせていただきました。ただ、いざというときの保険で輪行の用意はしていまして、最悪吉野から電車で帰ろうと思ってました。男だけど、パパだから(笑)

さらに、現地でのスタート地点の問題が。目の前にドライブウェイがありますが、ヒルクライム大台ケ原のスタート地点はさらにこの先、上北山村役場まで行って、そこから登ってきます。しかし、ここまで来た私の精神的・体力的な疲労はすでに相当なものでした。しかも、この先にはまた長いトンネル!「もうイヤー!」と超能力発動する勢いでしたので、「男」の看板をいったん下ろして、ヒルクライム大台ケ原のコースに、途中参加(テヘ!)。八甲田山じゃないんです。退くことも大事!戦争反対!

あとで知ったのですが、そこでショートカットした区間が、ヒルクライムコースの最大の勾配区間。えらそうに言って一番しんどいところを逃してしまい、男も何もあったもんじゃないのですが、しかし、途中からでも十分えぐかった。

序盤から13%台の勾配がずっと続き、8%の傾斜で「休める!」と感じるほどの異常事態。辻堂分岐でヒルクライムコースと合流するのですが、それまでの道も結構えぐいッス。100mごとに距離が書いてくれてあるのですが、1㎞が遠い遠い!表示のせいで凹む。余計なお世話!(笑)

最初19キロくらいから表示が出るのですが、小まめに教えてくれる分、絶望的に遠いです。時間もすでに1時ですので、スタート地点まで移動しつつ、そこからまたヒルクライムしてたら帰宅は完全に夜になっていたと思われます。

こうして、頂上まで190の表示が少しずつ180、170と減っていくのを横目で見ながら、ひたすら登っていきます。辻堂分岐を越えると傾斜は10%以下に緩み、視界も開けてきます。右も左も山。山。これって、山の尾根を縦走してるのでは?と思うような景色です。

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本当にここは神の国か。

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雲海と、その下に山、山、山。とにかく果てしなく続きます。

距離表示が5キロを割ると下り坂も出てきまして、ようやく。ようやく。奈良から90㎞。ようやく!

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つきましたー。

遠いッ!同じ県内移動と思えないッ!福井に行くよりしんどい!イヤ、コレマジやで!「巨人はロッテより弱い」じゃないですけど、「大台ケ原は敦賀より遠い」。コレ、実感です。

途中で買ったドリンクも飲み干していたので、念願の自販機!あった!

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高ッ!!!

エメマン160円!いろはす160円!下界じゃ100円やで!

しかしジュースはこのあと25kmくらい買えないですから仕方ないです。そういえば、吉野のローソンからここまで45kmくらい、コンビニが一軒もなかった・・・。

ようやくめぐり合えた自販機でジュースを飲み、せっかく来たので食堂でうどんを頂きました。ここもうどんおいしかったです。なんなの?この辺うどんエリア?

しかし改めて見直すと、このへんにいるの、みんな登山客。本格的な登山ルックのみなさんのなかに自転車野郎一人。登山客の方に、

「よくまぁこんなところまで!自転車で!?」

と驚かれましたが、いやいや、登山の方がすごくないですか?

こうして標高1600mを超える山頂までとりあえず到達し、満足感に浸りつつ、あとはひたすらダウンヒルです。
来るときとは大違いの超特急。あっという間にふもとに下りて、さらにそこから吉野までもほぼ下り。40㎞/h前後で下って一気に帰りました。寒いので持ってきた薄いウインドジャケットで快適でした。

帰りにまたあの鹿路トンネルを通りましたが、やっぱり怖い。一応帰りは歩道通行もトライしましたが、泥などが落ちていてとてもじゃないけど無理。車道復帰すると、こんどは抜かれる瞬間に分離帯をまたぐ車のタイヤの音が爆音なのです。怖い。でも、何台も抜かれているうちに、

「音がうるさいということは、距離を取ってくれているということ。これはやさしさの音。」

とポジティブ解釈をすると、怖くなくなりました。

桜井までおり切ると、時間も5時半くらいですのでレーパンでむき出しの脚が寒い。前に停車している車の排気ガスで暖を取るという、不健康すぎる行為に出る始末。そのまま家に帰宅したのは6時40分。

我が家の夕食は6時半なので、なんとか夕食に間に合わせたかったのですが、10分遅刻でした。パパ失格であります。

「どこ行ってた~ん?」

という奥さんに、なんと説明していいやら分からない場所なので、

「えっと、まぁ、奈良のすごい南。」

と答えると、

「ふーん」

と言ってもらえました。

この日の上昇高度は2870。富士山7合目くらいですか。肉体的にはどこが痛いというわけでもないのですが、身体中を削られたようなダメージ。距離的には180kmですが、300㎞相当の疲労感です。どうやらその夜はトンネルの恐怖のせいか、私、一晩中うなされていた模様(笑)

結論:大台ケ原、完全自走はちょっとあまりおススメできないかも(笑)