慈眼寺 副住職ブログ

五劫院 五劫思惟阿弥陀仏

本日は奈良門中のお仲間である五劫院さんでお施餓鬼の法要のお手伝いをさせていただきました。
私の母校若草中学のほど近く、東大寺の塔頭でもある五劫院さんは大変歴史のあるお寺です。奈良には東大寺、興福寺という、いわば王、長島級のお寺がゴロゴロしているせいで、麻痺してしまいますが、大変に歴史の古い由緒あるお寺で、本堂の作り、境内のたたずまい、どこをとっても「コレがお寺だなぁ」という風格があります。

このお寺には非常に珍しい仏像がご本尊としてデーンと座っておられまして、このインパクトに魅せられた人は数知れず、みうらじゅんさんもトリコになったとてつもないインパクトです。

その仏像の説明をする前に、まずは五劫院さんの「五劫」ってどういう意味かを説明します。
「未来永劫」と言いますが、「劫」とは、仏教における時間の最長単位です。

百年に一度、天女が降りてきて、羽衣で四十里四方の大石をさらっとなでます。四十里とは20km。20km四方の大石ってすごいですね。20kmって近鉄奈良駅から石切駅くらいですね。そしてさらっとなでたとき、摩擦で、ほんのちょっと、石が削れます。そしてまた百年後、天女が降りてきて、またさらっと。石が目には見えないほど減ります。これを繰り返して石が摩滅して完全に無くなってしまうより長いのが「一劫」だそうです。で、五劫は×5になります。

要するに、「五劫」=「ワケがわからないほど長い時間」という意味になります。

ここのご本尊が「ワケがわからないほど長い時間、考え続けた」ということに由来して、このお寺は五劫院と名付けられました。
阿弥陀如来が如来になる前、法蔵菩薩という名前でした。そのとき、法蔵菩薩が、どうやったら衆生のすべてを救えるのだろうか・・・と悩んで悩んで、考えて考えて考え抜いて、阿弥陀如来におなりになられました。その悩んで悩んで、考えて考えて考え抜いた時間が「五劫」で、そのくらい長いあいだ考えてるとどうなっちゃうかというと・・・

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コレです。

すごいでしょ。この漫画的表現。以前言ったように、仏様の髪の毛は、本当は直毛なのに、神通力でぐるんぐるんに巻き上がっています。その神通力をもってしてもこのサイズ。そして悩み抜いているわりになぜかふくふくしいこのモッチャリ感。実にいいです。五劫思惟阿弥陀如来の作例は数体しかありませんが、その中の代表的なものです。サイズもかなり大きいんです。こんな仏様を毎年間近で見ながら法要ができて、実に幸せです。こんなこと言ったら怒られますが、法要中しょっちゅうみとれています。お坊さんしててよかったなと思います。

今年も見られてよかった。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。