慈眼寺 副住職ブログ

但馬 仏像の旅①

先日、色々用事も重なりまして、方々に謝ったりしながら、少しだけ家族で旅行に出かけさせていただきました。
5月の連休には色々用事もあり、そもそもどこもかしこも混雑で料金も高い時期に出かけるのは納得がいかず、自転車以外はどこにも出かけてくないので、どこかへ行こうということになりました。

さて、思い立って、私にはまず行きたかった場所が。それが但馬地方です。

城崎の温泉などは行ったこともあるのですが、但馬地方には隠れた渋いお寺がたくさんあります。近江の方にももちろんたくさんあるのですが、そっちは自転車でも行けますので、今回は娘のために神戸の「アンパンマンミュージアム」、奥さんのために三田のアウトレット、その二つの目的地のあいだに、私のお寺巡りを挟み込む、兵庫縦断の旅になりました。

まず、奈良からまっすぐ三田に向かい、アウトレットで子供服の買い物をしてもらい、さぁいざ、但馬へ。雄大な山々の景色や豊かな水量の円山川を見ながら何度も何度もトンネルを抜け、一気に城崎へ。ちなみに私、川が大好きなのですが、円山川は実にいいです。岡山の高梁川も好きなのですが、もっとスケールが大きいし、水も綺麗。いい川です。

ところで、そもそもなぜ、4月23日に城崎へ?それは「温泉寺」の秘仏の開扉に合わせたものでした。

最初にその日に開扉されることに気づいたときには運命を感じました。わざわざ旅行に出かける日に開扉される秘仏がある!しかもそれは奈良の長谷寺の観音様とのゆかりもある秘仏!何この歴史のロマン!

と、いうわけで、有名な温泉地、城崎へ。志賀直哉の小説で有名ですが、奈良の高畑に志賀直哉の邸宅があり、ハイカラな趣味が炸裂しています。先代住職である私の祖父は志賀直哉大好きでした。

一度だけ城崎の温泉には訪れていましたが、不覚にもそんなお寺があるなんて知りもしませんでした。ロープウェーで数分でたどり着いたのが、温泉寺。何も知らずにお金を払ってロープウェーに乗りましたが、アレは絶対歩いたほうがいいですね。娘がいたので今回は無理でしたが、石段でもいいし、横の軽トラがなんとか登れるくらいのほそい道は最高のヒルクライム道ですね。自転車で登りたい!

そしてたどり着いた温泉寺。

建立は738年ですから1200年以上前。まさに古刹です。
本堂は室町初期のもので、但馬で最古の木造建築。中世で刻が止まっています。実に重厚でした。(写真撮影はしていません)

まずはご本尊の前に、千手観音にご対面。いや~いい仏様です。(写真撮影はしていません)
もともと手が千本あったが、現在は八百何本とか、美人の奥様?が説明してくださいました。「ちゃんと千本あった系」ですね。

800余本の手が杖を持つ日本の手を中心に美しいシンメトリを構成しており、ずっと眺めていたい仏様でした。
ひとしきり間近で見させていただいたあと、いよいよご本尊の十一面観音。
もちろん写真撮影はしていませんので、下記温泉寺さまのHPでどうぞ。

http://www.kinosaki-onsenji.jp/visit/main_temple.html

お厨子の中におられたので、全貌は見えませんが、2Mをゆうに超す巨体。しかし印象はあくまで柔和。
長谷寺の観音様と同木同作、とのことですが、印象は長谷寺式が威厳のある様子なのに対し、弥勒菩薩的な優しい印象が個人的にはありました。

以前書きましたように(http://www.nara-jigenji.com/diary/2063/)、観音菩薩には男性・女性の二つの原理が共存しているのですが、このご本尊は水瓶だけを持っているせいか、余計に「アヴァローキテーシュヴァラ」の「豊穣の女神」=女性原理の方の側面が強調されているように感じました。

すぐ横の四天王も堂々たる姿でした。

ご本尊の十一面観音は一年に4月23日と開山忌の24日しかお厨子の扉が開かれず、それ以外では33年に一度、お厨子からご本尊が運び出され、以後3年間 はずっと外に出されるそうです。次回は平成30年にその、「33年に一度」がくるようです。お話を聞いて気づきましたが、3年後ならいつでも見られた上に、お厨子から出て全身をじっくり見られたのでは・・・、いやいやいや!一期一会でしょ!あのとき感じた運命はホンモノ!

いきなり初日からいい仏様に出会えました。
宿泊は城崎は人が多くて疲れる上に、貧乏性なので、温泉全部回りたくなってしまうので、香住のほうの民宿に泊まりました。こちらのほうの日本海は本当に本当に鏡のように美しく、是非、自転車でここを走りたいと思いました。3年後にご縁があったら自走で来ようと心に誓いました。