慈眼寺 副住職ブログ

奈良はYDM④「森マダムの聖地:くるみの木」

仏像シリーズの好評ぶりはとどまることを知らず、当ブログの通常の三倍の赤い彗星のようなアクセス数をたたき出しています。こういうヒット作の続編は難しいです。「キル・ビル」も続編は微妙でした。「ハイランダー」も一作目は良かったですが、その後は出すたびにひどくなっていきました。そして昨日は笑いに走ったつもりが思い切り滑ってしまいました。こういうときは、Y・D・M奈良はやればできる町!第4弾です!

今までは知る人ぞ知る個人的イチオシ店を紹介していましたが、ついにきました。私の卒業した小学校のすぐ近くにある、奈良で長年一番元気があるショップ。メジャーすぎるほどメジャー。全国の森ガールから、そして少し年齢の上がった森ガールならぬ森マダムから熱烈に愛される全国的有名店。え?そんなのあったっけ?あります!遠く東北からでも、四国九州から海を渡ってでも、代官山のある大都会東京からでもわざわざこの店に来るために奈良にやってくる森ガール&マダムの聖地。ここまで言えばお分かりでしょう!「くるみの木」です!

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 何がすごいって、まず「奈良 カフェ」で画像検索するとほとんどココ。絵になる。めっちゃ絵になる。そして、混雑。土日になると踏切手前のこのお店の前にオシャレなマダム&ガールが大集合。祭りですか?今日は森ガール祭りですか?というほど似通った格好の上品なマッダームが列をなしてこの聖地に巡礼してきます。表を通っていると、ここに入る人とそうでない通行人がひと目で区別できます。ちなみに「森ガール」という言葉を知らない方々のために説明いたしますと、「森にいそうなガール」ということらしいです。言いたいことは少しだけわかりますが、森を舐めたらいけません。あんなカッコで森に行ったら帰ってこれませんよ。あくまで「いそうな」ガールということですね。「いてほしい」かな?じっさい青木ケ原であんな人に出会ったら絶対に般若心経唱えますけどね。

 ちょっと偏見に満ちた説明をしてしまいましたが、要はナチュラル志向の、力を抜いた暖かみのある空間といいましょうか、赤毛のアンの世界そのままといいましょうか。要は「女子の好きなものを思いっきり詰め込んだ空間」といえばしっくりくるでしょうか。前厄のおっさんが何を熱く語っているんでしょうか。泣けます。

 私は奥さんとこの店に入ると異物感がすごくてあんまり長居できないのですが、奥さんの買って帰るケーキはよくいただきます。スウィーツ住職ですね。バナナタルトかダークチェリーのケーキが好きです。今回はモンブランにしました。

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店内はとにかく緑に囲まれたおちついた空間で、マダムたちがいつもここで楽しそうにおしゃべりをしたり、ゆっくり景色を眺めながらお茶を飲んだり、ほんとうに別世界です。奈良感ゼロ。大仏も鹿も全く感じさせない。あら、ここはプリンスエドワード島かしら?ママ、キドニーパイが食べたいわ。違います。奈良です。ここは奈良市法蓮町です。夕方になると踏切のせいでめちゃくちゃ混むのに、遷都祭のときも予算の関係で高架線路にしてもらえず、次の1400年目まで混雑確定の一条通沿いなのです。そんなことが信じられない。誇張ではなく、そんな現実を全て忘れさせる異世界、それがくるみの木です。

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見てくださいこのオシャレとしか言いようのないナチュラル空間。今は真冬の雨の日という最悪のコンディションでコレですよ。この状態でも、いつ柱のかげから原田知世が出てくるのかと心配になってしまいます。深緑のころはこうですから。

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このようにラピュタの上の方みたいになってしまいます。ロボット兵が歩くわけですね。ここに。原田知世のカッコして。もう意味がわかりませんね。すいません。深緑の頃は本当に絵になります。踏切そばと言いましても、せせこましい感じは一切なし。かえって踏切や線路の錆びた感じがノスタルジックな雰囲気を醸し出します。駐車場はいつもいっぱい。うちの妹はここのそばに住んでるのですが、ここの順番待ちの番号をとるビジネスをはじめようかと本気で考えたほどの人気ぶりです。置いてある洋服や雑貨もここのコンセプトにぴったりの自然で着心地がよさそうな素材にこだわった商品ばかり。

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最近奈良にこことよく似たコンセプトの店がたくさんできていますが、間違いなくここが発信源だと思われます。べつによそが真似したとか言いたいわけではなく、奈良にああいう文化を根付かせた功労者でありパイオニアは間違いなくここだと奈良に住んで73代目の私が断言します。

何がすごいってここの社長さんは奈良で単純にカフェをしてるだけではなく、「秋篠の森」という宿泊施設まで兼ね備えた施設を作ってミシュランで星を獲得したり、全国各地でフェアや商品開発をおこなったり、単なる経営者を超えた文化のプロデューサーとして活躍しているところです。奈良漬と鹿と大仏におんぶに抱っこで何一つ新しいことにチャレンジしないこの奈良のよさを県外から来た方が発掘してくれて、全国に発信してくれる。地元の良さは案外地元の人にはわからないものですが、本当に素晴らしいことです。このくるみの木のすぐ近くにある一条高校の出身者には映画監督の河瀬直美さんがいますが、彼女と並んで、奈良の価値を再発見させてくれた稀有な人物だと思います。なにより営業として成功しているのがすごい。アート気取りで森にこもるのは簡単ですが、この人からは町に森を持ってきたらいいじゃないかくらいのバイタリティーを勝手に感じてしまいます。(お会いしたことは一度もないですが)「私の行くところが森よ!」くらいのスケールをもった女傑のプロデュースした森に植えられた、最初の一本。それがこの「くるみの木」だと勝手に感心しきりの、副住職でした。

P.S.そういえば、昔ゲゲゲの鬼太郎に東京中を森に変えた「原始さん」って妖怪がいたなぁ・・・。